Yasuragi 〜大安寧〜
関心メモ / 半SF好奇心の種
世界中からカドがなくなっている。
テーブルや椅子のとがったところは丸くなり、とがっていればシリコンのようなシールを貼ったりする。
学生の頃は野球をしており、スパイクシューズを履いていた。
当時は、土をかくための金具がびっしりついていたが、現代は金具の数が減り、そのぶん合成素材の凹凸で代用されている。
子ども用の絵本についてもおもしろい。
ネットのブログで、「子どもが角に目をぶつけるのでこわい」のような記述を見かけた。
名前は憶えていないが、「さんかくをさわろう」的な、幼児が形を覚えるための、三角形でできた絵本もあった。
しかしそれも、ケガをしないようにか、角丸である。
三角というより、おにぎりである。
そういえば、スティーブ・ジョブズがMac OSを作った時も、Windowsのような角だらけの画面を嫌って、滑らかで視覚的に美しい角丸UIをエンジニアに作らせた、という話を聞いたことがある。
肉体に刺さって実害が出る可能性がゼロであるデジタルですらそうなるのだから、人は角があんまり好きではないのかもしれない。
……とも思えば、インターネットのイラストなどでは、ギザ歯と呼ばれる、サメと同じように尖った三角の歯をした人の絵のジャンルも生まれている。
実際に、自分の肉体にピアスで穴を開けまくったり、舌をヘビのように縦にスプリットする人もいる。
すこし角から話が逸れたが、テレビで活躍する芸人やタレントも、角の立たないコメントを求められるようになった。
どうやら、「コンプライアンス」や「傷つく人がいるから」のような、世の中への配慮らしい。
でも、コンプライアンスがそこまで騒がれなかった時代のお笑い番組で、今の大御所が全盛期だったころの漫才やバラエティを見ていると、角どころか、毒舌と暴力を入り乱れるように駆使して爆笑をかっさらっている。
それを見る現代のYouTubeのコメント欄が、かつてを非難するか。
いや、結果としては、まったくそうでもない。
「くそ暴力過ぎて草」
「今だと絶対やばい」
「やっぱりこれじゃなきゃ」
「昔の感じでまたお笑い番組やってほしい」
という、切望の方が多い気がする。
少なくとも、非難に負けない濃度で切望されている。
そんなわけで、人間というのは、
角があると角丸にしたがるし、角丸が多いと角が欲しくなる
ということなのだろう。
では、ここで一つ提案なのだが、世界中に一つの指標を増やすのはいかがだろうか。
その名も、「角度」。
今、私はこれを「カドド」と呼びたくて思いついたが、ついつい笑ってしまった。
すでに「角度(かくど)」という単語が存在するではないか。
じゃあ、角度(かくど)で。
コンテンツやモノに対して、事前に角度を表示する。
「このお笑いチャンネルは、角度15°です」
とあれば、きっと毒舌や暴力性がすごいのだろうなと、わかったうえで見られる。
130°です、とあれば、何でもかんでも肯定して、無難な言い回しでその場を収めてくれる番組に感じる。
実生活においては、角マンションなんていうマンションがあっても面白い。
デザイナーズマンションの類だ。
椅子やテーブルなどの家具は丸みなし。
蛇口もトイレの便座も、現代だと当たり前のように角丸になっているところは、全部丸みなしの純粋角。
お風呂の浴槽もカドカド。
部屋も全部角部屋……というのは余計。
朝起きたその瞬間から、緊張感がすごそう。
カップルで住んだら、一日の時間のうち9%ほどケンカが増えた、みたいなデータも取れそうである。
角マンションにも品質がある。
角検定を突破した角ソムリエが、
「このキッチンは角の位置がいいですね。ここでケガした場合、血が床に落ちて模様になります。非常に深く考えられています」
とか、
「この角のせいで、うまく物体が立ちません。“角が立つ”の裏読みとして、まあユーモアがあるかなと」
とかの評価をし、部屋のランクがつく。
突然思い出した。
角が全部丸くなったら、日本アニメのお決まりである、
「曲がり角で、急いでいる女子と食パンをくわえた男子がぶつかる」
やつも、なくなるのだろうか。
角丸だと、ぶつかる前にちょっとお互い見えるよね。
どうなんだろう。
その時くわえた食パンの角は、危なくないように、トーストしていない柔らかいやつなのか。
もはや、コッペパンとかベーグルに変わっているのか。
Tarachine 〜たらちね〜
生活ログ / ひとり語りの文字起こし
『川の流れは自然』
初夏の通勤路。透明な川と伸びた草を眺めながら、前を歩く女性の少しずれた服装も同じ視界に入る。自然と不自然の境目を決められないまま歩く記録。
***
2026年の初夏、快晴の日。
職場がある最寄り駅を降りると、15分ほど歩いて、自分の勤め先に到着する。
その間、民家はあるが、あまり飲食店とかコンビニというものは見当たらない。結構な田舎のエリアであり、そこそこにちゃんとした川も流れていたりする。
私は都会で働いていたことも長かったので、この緑の中を歩くというのは結構好きである。
川のほとりを歩いて、向こう岸に渡るときに短い橋を渡る。向こう岸に着いたら、さらにその先にある職場に向かうという、簡単なルートを歩いている。
ちょうどその時期から、きっと4月ぐらいから勤め始めたのだろう。昨年までは見なかった。冬までは見かけることのなかった女性が、いつも同じ時間帯にそこを朝歩いている。
いつも私の前を歩いているので、たぶん1本早い電車なのか何なのか、とにかく私より早いタイミングで駅を出て歩いているんだと考えられる。
スタイルのいい女性で、この時期は日傘も差す。フリルがついた、確か思い出すに、外側が白く、内側が黒の日傘。日傘の外側にはピンク色のフリルがついていて、可愛らしい日傘を持って歩いている。
そして、白いニットの半袖のシャツを着て、エナメルのような靴を履いている日もあれば、スポーティーな真っ白なスニーカーを履いている日もある。このスニーカーも簡単な作りではなく、たぶんエクササイズやフィットネスとか、ハイキング、ランニングをする人用の、そういった人でもおしゃれで、かつ機能性もあるような、比較的高価なものに見える。
その時には、チアリーダーが履いていそうな、比較的繊維の目が太い、ミドル丈のハイソックスのようなものも履いている。
たぶん体型維持のために運動をしているか、そもそも仕事がそういったエクササイズを教える先生とか、そういった人なのかもしれない。ヨガとか、ピラティスとか。
そしてその日は、スカートを履いていた。
私でも知っている有名なメーカー、ルルレモンの紙袋を手に持っていたのも確認している。
そして履いているスカートは、右側が斜めにずれて、お尻と腰の間ぐらいの位置まで下がっている。たぶんルルレモンだと思うインナーというか、パンツというか、それが覗いた状態で、そのきれいな川のほとりを歩いていた。
その日、川の流れは穏やかで、水もきれいだった。透き通っていた。
川辺の雑草を誰かが処理する時期は、まだ来ていないみたいで、長く伸びた真緑、黄緑の葉っぱがたくましく生えているのを、私は好きでじっと眺めつつ、時々、その腰から覗く彼女のルルレモンを見る。
たぶんあれはルルレモン。さらさらした良い素材なのだろう。
それが裏目に出ている。
川の流れは自然。
私は彼女を不自然だと思えばいいのか、それともこれは逆に、ある種の自然と思えばいいのか。
結論は出ないまま、職場に着いた。
Bisho-An 〜びしょう庵〜
掌編 / 物語作品
形式創作:ご報告があります
【作品】
チャットの送信元A:このたび、ご報告があります。
チャットの送信元B:何?
チャットの送信元A:数年お付き合いしておりました彼女と、今月……。
チャットの送信元B:今月? まさか?
チャットの送信元A:今月、入籍することになりませんでした。
チャットの送信元B:チャットで言うことじゃねえわ。
チャットの送信元A:メールで言うことじゃないやろ?
チャットの送信元B:今度、飯おごるよ。
チャットの送信元A:今から電話してもええか?
チャットの送信元B:飯行こ。今から。
Rinri 〜りんり〜
サウンドスケープ / 音の瞑想
0:00 - 0:08:49:00
トラック:コーヒードリップ
フィールドノート / 背景
🗂 技術情報
- レコーダー:RODE Wireless PRO,ZOOM M2 MicTrak
- フォーマット:48kHz / 24bit / Stereo
🪶 メタデータ
- 録音:20260706、自宅
- 再生時間:0:08:49:00
- ジャンル:ambient,lifestyle
- ライセンス:All Rights Reserved
© 2026 不得井(enui) / Futagu
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本作は、好奇心・省察・創作・音を通じて意識を探る、四つの層からなるFutaguシリーズの一作です。
流れをたどるのも、ただ漂うのも、どうぞ自由に。
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