Futagu Vol.2
enui 7/21/2026
Yasuragi 〜大安寧〜
関心メモ / 半SF好奇心の種
「3、2、1、はい。“はい”から先は、世界中のお金の価値はなしとします。」
世界で一番偉い人がそう言ったとしたら、どうなるのだろうか。
ラーメン屋に行った。
あちらにあったフランチャイズのラーメン屋は、中に誰もいなくなったらしい。
その向かいにある頑固なオヤジのラーメン屋は、まだある。
オヤジの目の前の席についた。
「お金、ないですけど、いいですか?」
と聞くと、
「うちのブタは、わかるやつしか食べられねえ。」
無料で食べさせてくれた。理由はよくわからない。
オヤジの気持ちが知りたくなった。
ブタの生態を読みたくなり、大学の図書館に向かうことにした。
大学には人がいなかった。
隣町の旧帝国と呼ばれる大学には、まだ結構人がいるらしい。
その場の対話が重要なんだとかなんとか。
ここはFランクのよくわからない大学。
あらゆるところで、子どもがかけっこしたり、鬼ごっこしたりしている。
渡り廊下には、毛布にくるまって寝ている人もいた。前に、橋の下で寝ているのを見かけたことがある人だった。
図書館に入ると、少し人がいた。
すでにブタの生態の本を読んでいる女の子がいた。
「食べたんですか?」
と聞くと、
「食べたけど、少し残してしまって。申し訳なくなって、ぶたさんのことを知ろうと思って。」
と、顔を引きつらせながら、うつむき加減で言っていた。
また今度読みに来るからと、一旦、読書の権利を譲って、外を散歩した。
トイレに行きたくなって、コンビニに向かった。
入り口には、ヤンキーファッションの集団がおにぎりとパンを食べながらしゃがみこんでいた。
「お前、ここに入りてえのか?」
と聞いてきたので、
「お手洗いだけ借りたくて。」
と返した。
とくにいじめてきそうなこともなく、カツアゲもしてこない。
普通にトイレを終えて、外に出た。
ヤンキーたちはデザートのスムージーを飲みながら、
「ぬるいな、これ。ぬるい。意外とうまい。ちょっと飲んでみ。わかる?」
と回し合いっこしていた。
身体を動かそうと思って、バッティングセンターに行った。
人は何人かいた。
しかし、ピッチングマシンは動いていない。
打席に立つ者に、斜め向かいから優しく軟球でトスを上げて、それを打つ集団が数組いた。
一組、カップルのような若者がいた。
打席には女のほうが立っている。
「トスへたくそ! 笑」
「えー? ごめんごめん。意外とむずかしいのよ。」
そう言って、うまくできない男のほうに、太い腕をした、野球メーカーのTシャツを着た男が近寄って言った。
「にいさん、手の力は抜いて。放物線の頂点を彼女さんのおへそあたりに定めて、ポイッと上げる感じ。」
少しうまく投げられるようになったのを見届けて、私は空いている打席に入った。
マシンは動かないので、置いてあるバットで15回くらい素振りした。
太い腕の男が、明らかに私のスイングをチェックするように見てきたので、いやな予感がして、早々に打席を出た。
そのまま建物を出たら、いつもお金を下ろしている銀行があった。
気になって入ると、ストッキングをかぶった、恰幅のよいスーツ姿の男性が、窓口カウンターの上に仁王立ちしていた。
「金をよこせ! このかばんに詰められるだけ詰めろ!」
手でピストルの形を作って、天井に向かってパンパンと口で擬音を言っていた。
銀行員の制服を着た女性が半笑いで、
「これでお許しを。もうこれが全てです!」
と、一万円札の束を十も二十も詰めていた。
Tarachine 〜たらちね〜
生活ログ / ひとり語りの文字起こし
『あばたが普通にあばたに見える』
昔の技術ごと愛して見ていた『ウルトラQ』で、どうしても飲み込めない計器のカットが一つあった。好きなものの欠点まで愛せるはずのことわざが、そこで一度だけ裏返る。
***
日本のことわざで、「あばたもえくぼ」という言葉がある。
あばたというのは、荒れた肌、ブツブツの痕。えくぼは、笑ったときにできるほっぺたのくぼみで、可愛らしさの象徴でもある。
好きな人のあばたであれば、えくぼにすら見える。そういう、「恋は盲目」のようなニュアンスを含む日本のことわざである。
私は小さい頃から、日本の国民的ヒーローであるウルトラマンが好きで、相当なマニアというわけではないが、グッズがあれば見てしまうし、手に取ってしまうし、怪獣の名前を言われれば、それなりに有名なものであれば分かったりはする。
今はもう、ウルトラマンを作った制作プロダクション、円谷プロダクションが運営している、かつてのウルトラマンシリーズとか、その界隈の作品やテレビ番組の映像をデータベース化して、アーカイブで見せてくれるサブスクリプション「TSUBURAYA IMAGINATION」に有料課金で登録して、時々見ている。
世界的に有名なのは、初代ウルトラマンやウルトラセブン、こういったところだと思うのだが、ウルトラマンが出てくるウルトラマンシリーズの前身である『ウルトラQ』というSFドラマが、かつて放送されていた。モノクロのテレビの時代である。
私はそれが28話分、おそらく28話で完結しているものなのだと推測されるが、『ウルトラQ』がサブスクリプションの中で見られるというのを知ったので、先日すべて見終えた。
基本的には昔の技術なので、今のように滑らかに巨大な怪獣を大きく見せたり、怪獣が空を飛ぶとき、それがCGのように滑らかに飛んだり、ということはない。
怪獣が飛ぶときや飛行機が飛ぶときは、光の加減で、模型を吊るしているアクリルの線がうっすら見えたりする。
声も、役者の口元や頭の上からマイクを垂らしているわけではないので、後からアフレコをしている。
技術的にはまだまだ甘いんだが、発想とかメッセージが素晴らしいので、基本的にはずっと楽しい。
昔の厳しい技術力の中で、よくもここまで熱量のあるものを28話分作ったなというところで、私も基本的には「あばたもえくぼ」という感じで見終えた次第なのだが、27話でどうしても気になったところがあった。
単的に言うと、ドラマの中に登場してくる飛行機のシーンなのだが、機長と副機長、まあ操縦士と副操縦士かな、が飛行機に乗っていると、大変な気流に巻き込まれるシーンがあり、そのときに副操縦士がメインの操縦士に向かって、
「見てください。数値が下がっています」
と大きな声で言う。
そうすると、お決まりのように、機長がその飛行機のいろいろな数字が出ている計器をバッと見る。
最初に、その見ている顔のアップがドンと差し込まれて、その次に計器がワンと映るのだが、多分ものすごくリアルな計器なんでしょう。いわゆる針式のメーターですね。
これが山ほど画面全体にあって、しかもモノクロで、全部がいろんなところを振り切ったり、揺れたりしていて、どの数値が下がっているのか、見ているこちらからすると全く分からないのだ。
2回目を見ても、私はいまだにどの計器の数値が下がっているのか、多分分からないと思う。
あのシーンはどうにかならなかったものなのか。
今から話が大きな展開を迎えるであろう、飛行機墜落系の前触れとしてはちょっと雑すぎて、あばたが普通にあばたに見えてしまったという、そんなお話。
Bisho-An 〜びしょう庵〜
掌編 / 物語作品
形式創作:問診
【作品】
医者:世の中には、何百何万という病名があります。
受診者:私はどれですか?
医者:どれでもありません。
受診者:肉体的には?
医者:身体年齢も、実年齢より15歳くらい若いです。
受診者:内臓は?
医者:かなり正常です。
受診者:最近、仕事に追われているのですが、精神的な部分は?
医者:非常に安定した脳波と心電図です。
受診者:本当に? 今の時代、みんな何か一つは病気を持ってると聞きますよ?
医者:はい。かなり異常です。緊急入院しましょう。
Rinri 〜りんり〜
サウンドスケープ / 音の瞑想
0:00 - 0:07:42:00
トラック:トイレ掃除
フィールドノート / 背景
🗂 技術情報
- レコーダー:RODE Wireless PRO,ZOOM M2 MicTrak
- フォーマット:48kHz / 24bit / Stereo
🪶 メタデータ
- 録音:20260706、自宅
- 再生時間:0:07:42:00
- ジャンル:ambient,lifestyle
- ライセンス:All Rights Reserved
© 2026 不得井(enui) / Futagu
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本作は、好奇心・省察・創作・音を通じて意識を探る、四つの層からなるFutaguシリーズの一作です。
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